ヴェニスの商人・8月17日初日

M列センター寄りで観劇。
ドーラン氏の今回の演出は、第一印象で『丁寧。』
英国よりご帰国後、初めて拝見した竜也さんは
ずばり『破天荒。』

開演前:劇場スタッフも、マントや羽根飾り等を
色とりどりに身に纏う。
観客が犇くロビーにて、開演15分程前より楽器の
生演奏と共に、キャストが練り歩き始める。
貴族は皆仮面を付け、道化も大きな被りもの。
セットの木も、3本ちろちろ歩きます。
人並みを掻き分けることも無く、ゆっくりと
ヴェネチアンカーニバルを楽しんでいるかの様に、優雅に。
2階にも、上がってゆきますよ。
眼だけが光っているのだけれど、立ち止まって
じっと顔を覗き込まれると少々怖い。(笑)
竜也さんがどれに扮しているのかは、パニックに
なっても困るので今回は控えます。
劇場側は、その辺りも警戒していると思いますので
日替わり、週替わりで対応するかもしれませんね。
身長や歩き方で、判る方はいらっしゃるかしら?
ん〜、今回は中々手強いですよ。(^^ゞ

開演前、客電が付いたままの客席。
道化は1階の通路で、ごそごそと動いたまま。
壁際の通路でも、道化が忙しく演じています。
そのまま、開演へ〜。

セットは水の都の、と或る桟橋。
壁に描かれた海に照明が中り、静かな細波。
シャンデリアが下りれば、其処はポーシャ邸の広間。
壁の電飾が灯れば、満点の星空。
決して華美では無いかもしれませんが、衣装もそうですが
本当に正統派の、美しさを大切にした演出だと思いました。
衣装もどれもとても素敵なデザインなのに、色が淡色。
基調は白。

軽く、全体的な感想等。
市村さんのシャイロック、流石だなと感じ入りました。
喜劇と言われるこの戯曲ですが、当時のキリスト教徒の
放漫さと、ユダヤ教徒の質素で厳格な振る舞い。
市村さんのシャイロックの悲哀が伝わってこその、
ヴェニスの商人だと感銘を受けました。
ユダヤ人に対する差別を、唾を吐き掛けることを
多用して表現しようとしていましたが、少し度が過ぎて
いるかなと思いました。
身体を振り回す、蹴り倒す等の身体的な表現で
キリスト教徒がユダヤ教徒を苛めている様は、
日本人にも充分伝わる筈。

寺島さん演じるポーシャは、ちょっとお嬢様と云う役柄を
気遣い過ぎている感。
彼女は、もっと野太い発声や情熱的な女性を演じることが
出来る方なので、演出で厳しく指定されているのだろうと
思います。
音は本来、水平には進まず上へ上りますから
1階後方の座席だと、ちょっと厳しいかな。

音に関しては、音源や効果音は非常に
『ライフ・イン・ザ・シアター』と雰囲気が
似ています。
お国柄が、音にも表れているなと思いました。
竜也さんは動きも多いので、客席にお尻を向けて
台詞を言うことが多く…ぉぃぉぃ…
壁に一度反響した声が聞こえて参りますょ。(爆)
客席は、こっち!(^_^;)

徳馬さんのアントーニオは、もっとバサーニオに
色目を遣っても宜しいのでは。(笑)
手をにぎにぎしたり、キスしたりするのは若き
バサーニオですから、ダンディズム全開で攻めるのも
是又、乙なもの♪
法廷で裁かれている身にしては、態度が大きくて
何事にも鈍感な様が、いい感じでしたよおー。

さて、バサーニオ役の竜也さん。
非常に静かな、能天気な青年。
キャスティングの一役だけならば、何と出番の
少ないことか。
ですが、この戯曲の大切な喜劇の部分の重役を
三役で担っていらっしゃるから、さあ大変。^m^

ポーシャに求婚をする、台詞のある人物。
詰まりモロッコの王とアラゴンの王も、超熱演。
寧ろ、こちらの方が楽しそう。(*^^)v
装いが過度なので、御声を聞かなければ判りませんっ。

モロッコの王は、アフロヘアーに真っ黒なドウランメイク。
首から下は、こげ茶色の衣装ですが腕が細過ぎて
腕も、塗っているのだと思ってしまいます。
真っ赤な手袋、真っ赤なマント。
赤い、アラブの先のくるりと尖った靴。
スペインの木靴よりも、もっと尖っていますよ…そう!
アラビアンナイトが履いている様な靴ですね。(^^♪
アレ、何処で手に入れたんでしょうか。(笑)
布製なのかしら、ちょっとオペラグラスでも
確認不可能でしたが、もしかしたら手作りなのかも。
大きな偃月刀を、振り回す暴れる。
かなり危ないし、煩いっ!(^^)!

アラゴンの王は、何故かよぼよぼのおじいちゃん。
ぼろぼろの黒マントに杖を突き、足元覚束ず遅れて
よろよろとご登場。
画家のダリの様な、くるっと丸まった長い口髭。
頭は白髪交じりでぼさぼさ。
御髪の爆発状態の、アインシュタイン博士然。
出っ歯のマウスピースを付け、ちゃちっちゅちぇちょっの
発声が、妙に怪しい。(ーー;)
極度の老眼で、お付きの者が顔より大きな虫眼鏡を持参。
何か読む度に、竜也おじいちゃんの変顔が巨大化!
箱選びで薀蓄を述べながら、エスカレートする血圧!
倒れそうと思った瞬間、見事に倒れる。(=_=)
も、お付きの者に支えられ直立不動で再び起こされ
続く薀蓄。
選んだ箱の鍵も、手が震えて鍵穴に上手く入らない。
お付きの者に、手を添えて貰い事無きを得る。
最後には、杖を放り出して逃げ出す…

遣り甲斐あると思うよ、この濃い二役。
静のバサーニオと動の怪しい人物。
このギャップが、型破りな藤原竜也。
敢えて止めた歯車が、勢いよく動き出した証が
此処に健在。

幕引きは、動揺を隠せず下手に去ってゆくジェシカと
哀愁を漂わせ、上手にそっと消えてゆくアントーニオ。
そして切り絵の様に浮かび上がる、ポーシャとバサーニオの
シルエットがとても印象的。

他にも、気になった役者さんや演出は沢山御座いましたが
今日は、この辺で。ヽ(^。^)ノ
休憩は15分、第三幕の第二場の哀れなシャイロックの
背中と共に、余韻を残しつつ後幕へ〜。

客席もお祝いのお花も、大変豪華な初日でした。
カーテンコールでは、一番竜也さんが嬉しそうに
見えました。
最後に登場した市村さんが、盛大な拍手を受けて
無事幕を閉じました。
演者の初日の緊張が伝わって来た、この演目。
力を抜いた、リラックスした皆さんの今後が楽しみです。


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