ロープ・12月13日マチネ。

二階最前列センターにて観劇。
やっぱり野田さんのお芝居は、二階でも観たい。
キャストの動きも早いし、照明も派手。
前列だけでは、埋もれてしまって見えない部分も多い。
一番上手側のセットは、ちゃんと錆び付いた鉄塔に見える。
プロレスの照明も、一階席をふんだんに使っているので
前列からでは楽しむことが出来ない。
終盤の、ミライの壕や家を仮定した
奈落への三つの迫穴も、初見では全く確認出来なかった。
この穴へは、ベトナムの帽子ノンラーを被った役者さんが
飛び込み、幾度と無く飛び出して来る。
リピート観劇の叶う方には、是非二階席からも
ご覧頂きたいです。

今回は戯曲拝読後の観劇で、逆に冷静に
観られたかもしれません。
調べなければ解からない詞が、耳に残っていました。
カメレオンが『コロボックルの言葉か?』と
聞いていた台詞。
アジール(ドイツ語)=治外法権
糊の道=糊口
くちすぎ=生計
ずぎわい=生業
たつき=生活手段
アジール以外は『日本語です。』とタマシイが
答えています。
台詞も少し違いますよね。
カメレオンの『俺はキラじゃねえー!』も勿論無いですし、
ノブナガがロープに弾かれるのを我慢する時の
『此処!』も、3〜4回は言っています。
これらはアドリブと云うことでは無く、役者さんが
自ら野田さんに提案して、受け入れられた部分でしょう。
リングネームも面白いですよねえー、グレイトな今川(笑)
と信長で桶狭間の戦い。
初見の時には、擬音の笑いで掻き消されてしまったし
気付き様が無かったですけども、タマシイの実況は
サブリミナルなんですね。
どうしてプロレスに『サツマイモ』なのかなぁ?って、
ぽかあーんとしてしまった。
色々な幕で、終盤への伏線が張られているので
脳をフル回転させないと、ついてゆけない。
今川やカメレオンを織り交ぜて、家庭内のドメスティック
ヴァイオレンスや、グレている生徒と説得する教師の
校内暴力も表現している処がニクイッ♪
^_^;クリスティーナ・アギレラの名前を出す処もニクッ!
ミライの村人のパントマイムも、一切戯曲のト書きには
見られない。

今日はちょっと長くなりそうなので(^^ゞ先に
役者さんのちょっと出し。
りえちゃん@タマシイ
とっても元気があって清らかでいい。
開幕から一週間が経過して、客席の空気に
慣れて来たのかも。
只どうしても、終盤の実況はパンチが無くて霞んでしまう。
序盤の弾んだ感じも消えてしまうし、重い台詞に
押し潰され気味。
もっとメリハリをつけて欲しいな。

えり子さん@JHNDDT
台詞、詰まるよねぇ。(笑)
台詞、危なげだよねぇ。(笑)
でも、すんなり乗り越えちゃうよねぇ。(笑)
是が、えり子さんパワーだよねぇ。(^_^;)
えり子さん自身のキャラで薄まっているけれど、
かなりDTの言葉の暴力やサディスティックさは強烈。
だけどDには愛されてる。夫婦の不思議。

じゅんさん@カメレオン
間の取り方がお上手ですよね。
観客との呼吸を知っている。
急接近のちゅうは、じゅんさんが嫌なの?
それとも、ヘラクレス?(笑)

松村武さん@サラマンドラ
ぼちゃぼちゃでも(*^^)器用な方だと思います。
発声も野田さんの舞台に合っている。
安心して観ていられます。

まことさん@ボラ
いい!すっかり掴まれたご様子です。
胡散臭いけど^m^ストーリーの大切な道先案内人。
ボラって、大法螺吹きのボラ?!

明星真由美さん@明美姫
ドスが効いていて迫力満点。
人生を力強く生きているバイタリティが、お芝居にも
現れている気がする。
お尻はぷりぷりプリティ〜♪

野田さん@D
もう、くねくね。(笑)
コロボックルダンスも、ふにゃふにゃ。
だけどやっぱり、身軽ですよね。
野田さんのスローモーションは必見です。

竜也さん@ノブナガ
皮肉る様な台詞が、巧くなったよなあー。
ニヤつく表情や、苦痛の表情もnice
身体のキレもいいしね、野田さんの表現したかった
『青年の純情』に、応えていると思うよ。
だけど、あの発声方法は身に沁み込んで
しまっているものだから、簡単には軽さが出せない。
りえちゃんと逆で、終盤はもっと凄まなくても
いいと思うんだぁ…
スパイダーソリティアのシュシュシュシュッ!も
軽いノリだけど、擬音⇒祇園祭りの足首回しが
可愛い。(笑)
この戯曲の、一番最後のノブナガの台詞が
願いでもあり、又希望でもあるんですよね。
背負ったものがとても重いストーリーですが、
最後にそっと戻って来るお盆に、一筋の光が見える。

リングは戦場。レスラーは兵士。
リングサイドはジャングル。
ロープは逃れ難き理不尽な苦痛から救われる境界。
ロープを越えたリングの下には、サンクチュアリーが在る。
野田さんが、sanctuaryでは無くAsylを使った気持ちが
解かる気がする。
実況は真実に口を噤むこと無く、人類の持つ力を監視し
主張し続けること。
レフリーは、わざと見て見ぬ振りをして
真実を捻じ曲げる比喩。
リングのロープに弾き返されるレスラーは、催眠にかかった
戦場の兵士。

タマシイの父親になったノブナガが、
『女の言葉は解からなかった…』と繰り返す部分が
物凄くリアリティがあって、叙情的で好き。
無力には、力が無いのではなく無力と云う力が宿っている。
流れた血は同じ色でも、流された状況や場所によって
其の意味が変わってしまう。
『本物の痛みと血を見せ付けてやる!』と云う
ノブナガは、
『タラリーン!』と云う頭の中で鳴り響くだけの
擬音以外、傍観者にどの様にして本当の痛みを伝えるのか。
理由は無くとも口実はある暴力に、青年の純情は
翻弄され、洗脳され易い。
理性に覆面をさせ、リングに送り込まれたノブナガが
『俺達は…勇士…か?』と何度も自分に問い掛けながら
自力で催眠から目覚める時、きっと未来は開かれる。
『止まれる筈だ!人間ならば…』の一節が、強く
心を掴んで放さない。




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