オレステス・初日。

H列上手にて観劇。
この度の作品、コクーンの最前列はXB列です。

通い慣れたシアターコクーンの劇場内に入ると、
先ず聳え立つ城壁と館の出入り口に記されている
大きなΧ(ギリシャではカイです)の印が眼に
飛び込んで来ます。
舞台下袖の上手、下手には其々パーカッション。
今回『音』にとても拘った演出になっています。
私の座席からは確認出来なかったのですが、他に
大量の鈴の音を鳴らしている方も居ると思います。
コロスが持っている傘の柄にも、鈴が数個付いています。
効果音に合わせて、パーカッションが生で音響を
創り上げてゆく展開です。
導入も、暗転無しでパーカッションの音から
徐々に楽曲が重なり合って始まります。
音響(録音済みのもの)を流す音量自体は、
小さいなと感じました。
赤子の鳴き声や鳥の囀り等、雨音とコロスの発声で
かき消され気味です。

今回は舞台転換が無い為、美術についての言及は
割愛します。

衣装については、其々の役者さんの項目にて
記述したいと思います。

最大の演出効果であろう雨ですが、効果的には
非常に有効だと感じました。
嘆きや怒りを、半強制的に前面に主張しています。
只、落下音が大き過ぎ台詞の妨げやキャストの
体力を消耗しています。
竜也さんの声が嗄れてしまっていた要因には
発声方法の変換もあるのでしょうが、只其れだけの理由で
あそこまで壊してしまったとは、私には思えませんでした。
体調管理も役者の務め、そう云うのは簡単ですが
無理があるものは無理だと考えます。
もう少し、雨音の落下音の緩和を強く希望します。

八百屋舞台に大量の水。
役者さんの足元の滑り止め対策は、万全に為されて
おりました。
冒頭オレステスは裸足ですが、足に滑り止めを
巻いています。
しかし激しく転がり飛び跳ねのた打ち回り、公演中に
身体の彼方此方に傷が増えてゆきます。
強く人の頭を引き寄せた為に、胸まで真っ赤に
なった時には流石に直視することが辛かった。
でも是は、お芝居の進行上致し方無いことなんだと
言い聞かせ、じっと見詰めている自分も同居して
おりました。
観る側にも、強い精神力が必要だと思います。

エレクトラ@中嶋さん。
大変小さく華奢な方ですが、私のエレクトラ像に近く
正直驚きました。
長台詞も安心して聞いていられます。
キャスティングに満足です。
強い情熱を放出するエレクトラ、今後も期待しています。
女性なのに衣装替えも無く、塗れたドレスで
体力を消耗されません様に。

ピュラデス@北村さん。
蜷川演出が初めてと仰っている割りに、違和感は
大きく感じませんでした。
穏和で知性もあり、友情に篤い男ではありますが
父親に勘当され、死をも覚悟する男。
もっと荒々しくても好いのではないか。
そんな印象となりました。
狂気を帯びたオレステスの元へ現れ、彼を抱擁する
シーンでは、竜也さんが有起哉さんの腕や手を
愛しげに愛撫しています。
同性愛表現が、顕著に表されているシーンです。

メネラオス@吉田さん。
精神的にも女性にも、ずるくて軟弱な男を好演しています。
衣装の胸元には金物の鳴り物、腕や膝にはチェーンが
付いており登場時や軍服としての効果を
大きく上げています。
オレステスを見放し始めると、眼が泳ぎ始めコロスの
女性に同意を求めたり、手を掛けて突き飛ばしたりと
一国を治める王としては、余りの人望です。

ヘレネ@香寿さん。
真っ白なドレスの大きく開いたスリットから、
太腿露わに美脚を披露しつつ練り歩きます。
第一声から、ストレートプレイとは違う喉元からの
艶かしい御声で、自己中絶世の美女を熱演です。
流石に金髪の鬘がお似合いですね。
姉のお墓に供える頭髪を、躊躇しながら毛先だけ切る様が
良く表現されていました。
アポロンに助けられ…やっぱり浮いていました。(笑)

プリュギア人@横田さん。
奴隷ですが、オレステスやエレクトラよりは
余程綺麗な衣装をお召しでした。
コロスに傘で突っ突かれ、痛い痛いと滑稽で楽しい。
オレステスに物凄い勢いで頭を引っ張られておりますが…
本当に殺されそうな、恐怖を覚える幕です。

テュンダレオス@瑳川さん。
体型がどっしりとしたおじいちゃん。
私のテュンダレオスのイメージとは少しかけ離れては
おりますが、安定したお芝居です。
胸元には大きな木製の飾り、首から幾重にも長く垂らした
数珠状の木片。
この衣装の細工も、登場時の音の効果や貴位の高さを
巧みに表現しています。
もっとオレステスを、蔑視してもいいかもしれません。

一番好いと思ったのがコロスの女性15人衆。
個々を見れば未だ荒削りな部分も見え隠れしていましたが、
この演目には絶対に欠かせない力を発揮していたと
思います。
重要な小道具に傘を使用していますが、コロスは
基本的にストーリの歴史の流れや心情を説明する部分と、
主人公の味方をし多数の力で一つの大きなメッセージを
観客に運ぶ、進行上大変大きな役割を担っています。
人の眼には映っていても、現像としては実在しない
西洋の妖精の様な存在だと私は考えています。
彼女達は主人公と交信し、自分達で考え眼には見えない
何某かの大きな力へと転じてゆきます。
其の部分が、傘で非常に好く表されていたと思います。
憐れみや叫びも勿論表現しておりますが、悩みながら
しっかりとエレクトラの一つの力となってゆく部分も
見所でしょう。

オレステス@竜也さん。
どうしてオレステスだけ、稽古中と衣装が
違うのでしょうかねぇ。
冒頭の狂気に襲われる幕で、暴れながら羽織っていた
薄い上着を俊徳ばりに脱ぎ捨ててしまう為^_^;上半身は
常に半裸です。
おまけに、紐で只巻いているだけの腰巻も…
殆どの幕で、十字架に貼り付けになった際の
キリスト状で進行します。(爆)
眼のやり場に困ると云うのもありますが、余りにも
貧相な衣装に正直がっかり。(ーー;)
膝の痣防止に、プロテクターを巻いているので
そのミスマッチさに苦笑いでした。
エクステンションで髪の毛も長くしているので、
お髭は素敵だと思いますよ。
メリックさんの編み込みを、ふと想い出してしまいました。

18歳以下の方、すみません。
エレクトラとの近親相姦表現が、想像以上に
ストレートでした!
ちょいと公然猥褻気味な程、濃厚な…その…ごにょ。
キター!生○○○○?位の勢いで、思わず悲劇なのに
にまにましてしまいました、ごめんなさい。(^^ゞ

眼に映る、演じているものはとても評価出来ます。
表情、瞳、身体の動き、臨んでいる姿勢。
全力で挑んでいるのが解かります。
酷評で心許無いですけれど、声の状態が今のままでは
折角の熱演が私見、70%減だと考えます。
悲しいし、本当に勿体無い!
もっといいものになる可能性が在るからこそ、
体調の改善を心から願っています。

アポロン@寺泉憲さん。
神は姿を現さず。声だけです…
スピーカーから神託が流れます。(爆)
是って、録音なんでしょうか?
でも間合いを調整しないといけないから…
音響さんが出来ますか、そうですか。(=_=)
最後の演出上、客席を使いたかったのは解かりますよ。
んー……お芝居なんでね。
アポロンにも、是非浮いて頂きたかったです。
強烈なスポットライトの出現で、神を表現しています。

最後に、1階前方客席の上空から大量に紙が
降って参ります。
現在戦争を続けている国の、国旗と恐らく国歌だと
思われる文章がプリントされています。
山形女子が提言したにも関わらず、蜷川氏が
どうしてもこの演目を上演したかった意図が
この演出に表れています。
紀元前のテーマであるオレステス、現代でも
報復に次ぐ報復が続いていると、暗黙で語られ
暗転となり完結します。

簡単ですが、今日はこの辺で。
パンフレットは、とっても素敵な仕上がりです。
此処には画像を上げることが出来ない為、画像BBSへ
最後の演出用印刷物と共にアップします。
パスワード制の為、ご入室出来ない方はご了承下さいませ。


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