オレステス・21日マチネ

5列目上手にて観劇。
冒頭から、今迄とは何か違う力を感じました。
前方席はライティングで暑いのですが、第四幕は
鳥肌が立ちっ放し。
両腕をがっしりと掴まれ、がんがんと揺さ振られる様な
そんな衝撃。
終わってみれば、4回目の観劇にして半泣き状態で
すっくとスタオベ。
そんな劇場内を見回して、竜也さんとても嬉しそうな
御顔をしていらっしゃいました。
前日のイベントで、声が嗄れていると仰る方も
いらっしゃいましたが、アレは以前聞いたことのある
喉に負担を掛けない独特な話し方。
公演では、一切不安を感じさせない好調な御声でした。
大変素晴らしい公演を観させて頂けたことに、
心より感謝を。

中嶋さんの、啖呵をきる様な台詞回しと観客の眼を
順送りで覘き込んでゆく瞳の流れに挑発され、
ぐっと劇中へ引き寄せられる。
前列だと跳ね返る雨の音が耳に強く、台詞自体は
後列の方が響きが好いと思いました。
雨が降り出すと、蒸した空気が一変し清涼感で
充たされました。
マイナスイオン効果。
只、オレステスが眠りから覚めてからも暫く雨は止まず
寝床には水が溜って、其の上に再度寝転ぶことに…
狂気に襲われベッドを投げておりますが、勢いだけで
よくあの水の重さを持ち上げられるなぁと、感じ入ります。
『姉さんはあんなやつらみたいになっちゃ嫌だ!』と
発狂する台詞が、早口過ぎて聞き取れず。
腰巻を掃いかけて駆けずり回り、完全に掃い除ける前に
滑って転倒。
でも、大きな痣や出血する傷も特には見られず
綺麗な、汗で光る背中が印象的でした。
テーピングも、右足の親指のみ。
身体へのダメージが少なく、観客には大きく
転倒している様に見える転び方を、もしかしたら
獲得されたのかもしれません。
メネラオスの前に姿を現す際、寝床から再び
転がり落ちますが、掛かっていた上掛けを模した
防水シートに脚を引っ掛けて転倒していましたけれど、
私は計算内の転倒だと思いました。

『叔父さんっ!!!』
躊躇いの無い、本気のビンタ復活
本当に有り難う御座います。(笑)
精神的な駆け引きの中で、メネラオスも
『何故逃げない!』とオレステスの髪の毛を
引っ張り上げておりますので、勝負はお相子と
云う処でしょうか。
テュンダレオスに慄き、シートに包まり眼だけを覗かせる
オレステス。
此処で通常、必ずメリックさんが私の頭の中を
駆け抜けてゆきますが^_^;包まり作戦失敗。
シートが絡まり頭のみ突っ込み、正に頭隠して
尻隠さず!
速攻で、お祖父ちゃんに見付けられていました。(爆)
メネラオスが逃げ去ろうとする時、今迄は必死に
マントを掴んで引き摺られていましたけども、この度は
がしっと背後より羽交い締め状態。
振り払われたオレステスも宙を飛んでおりましたが、
振り払ったメネラオスも其の場にて転倒。
圧巻でした。
この時ふと思ったのですが、初見では違和感の大きかった
膝のプロテクターも足の滑り止めも、昨日の衰弱した
オレステスには、極自然に狂気で傷付いた
ぼろぼろの包帯に映りました。
下半身を覆っただけの衣装も、竜也さんの身体の繊細な
動きから生まれる、様々な姿態のラインを
魅せることに依って、観る側にオレステスの悲愴な心裡を
汲み取らせる為のものではないのか、そう感じました。
無言で行われる身体表現のパフォーマンスダンスの如く、
自在にくねり傾き伸縮する身体。
柔軟な肉体と光る背中は、神々しささえ感じさせました。

有起哉さんの滑舌が、ちょっと気になったなぁ…
篤い想いは湧き上がって来ているんですけどね。
友情のおでこにちゅっ♪は、今回おでことおでこを
こっつんこ♪でした。(^_^;)
今生最後の篤い抱擁を交わしている姉弟に、背を向けて
眼を背けているかの様なピュラデスですが、其の間
何かこの二人を救う道は無いかと、構想を巡らせて
いるのですね。
見てはいけないものを見ていない訳では無く、
見なければいけないものを必死に見ようとしている、
そんな背中でした。

初舞台を踏まれているヘルミオネ。
表情の変化が、少々硬く単調の様な気が致します。


戻る