ライフ・イン・ザ・シアター・3/31ソワレ

うん、私はこのお芝居好きです。
一文字で表すとすれば『熟』かな。
円熟のロバートと、成熟してゆくジョンの
お互いに対するささやかでいて寛大なるオマージュ。

4列目センターにて観劇。
4列目迄オケピなので、傾斜ZERO。
劇中劇は舞台の奥で繰り広げられる為、若干観辛かった。
楽屋のシーンは舞台前方、時には舞台縁で展開するので
全く問題無し。

先ず美術。
正面舞台奥に劇場を模した垂幕。
是、世田谷パブリックシアターですね。
観客の入っていない空の劇場と、劇中劇で使用する
観客の入っているヴァージョン有り。
仮想の劇場のドレープが奥に掛かり、必要に応じて
開閉可能。
仮想舞台の照明機器として、縦型のライトが左右に聳える。
劇中劇のセットは、勿論全て客席側が裏面。

楽屋シーンは客席側に鏡を想定してメイク道具。
横に長めの2人分の化粧台と、木製の丸椅子。
並んで座った2人の後ろに、ハンガーに掛かった衣装が
常に10着程。
舞台転換が目まぐるしいので、台座ごと可動式。

衣裳部屋は壁が見えない程天井迄沢山の衣装が掛かり、
2人がやっと立ったり座ったり衣装を弄ったり、
上手側に掛かった立ち鏡に向かえる程度の狭い台座。

ダンスルームは曇った大鏡とレッスンバーのみ。
鏡は客席が反転して映り込まない様曇らせたものを
使用しているのでしょうが、直前に立つ役者さんは
はっきり映り背筋チェックは万全!
レッスンバーは、竜也さんが寄り掛かると撓って
折れそうな勢いで些かスリリング。(笑)

第11場は窓のセットは無し。
ロバート演じる老人の車椅子がロッキングチェア。

音楽は舞台転換の時に流れるのですが、ポールさんの
趣向がとてもよく現れていると思います。
若々しい感性に富んでいました。

照明と美術の関係ですが、舞台縁と中央にシースルー
スクリーンが度々登場します。
舞台中央のスクリーンは、主に白い照明を当てて
光を反射させ、その裏の劇中劇のセッティングを
見えない様にする手法で取り入れられています。
問題は舞台縁の4枚の網戸式のスクリーンなのですけれど、
暗転の度に無作為に視野を右へ左へと横切り
はっきり申しまして目邪魔です。
時には舞台袖の間を移動する、大道具さんの
カモフラージュにも利用されておりますが
暗転している時点で、舞台転換を図っていることは
観客には明確なのですから、私は必要性を全く
感じませんでした。

戯曲は、今回日本で演じるにあたり若干表現を変えて
来ている部分も御座いました。
ジョンのロブスターに対してロバートの『甲殻類ね!』とか
天体暦は何て言っていましたかね、平常心?一極集中?
満身創痍?ちょっと忘れてしまいました…(=_=)

さて^_^;本題です。
このお芝居全般を拝見して感じたことの一つに、
やっぱり役者さんって素晴らしいなと云う最もシンプルな
想いが過ぎりました。

市村さん演じるロバートは、小難しいベテラン演劇人を
時にイラツキながらも、21場迄は生き生きと
演じています。
ジョンが新しいオーディションに受かった時から、
ロバートはジョンの若さや才能に対する嫉妬や
羨望の念を強く懐き始め、苦悩し始めます。

片やジョンは、第3場迄は若手として硬く先輩の
ロバートに対して、純粋に敬いの念を忘れては
いません。
ところが4場の剣先の件から、急激に彼に対して
煩わしさを隠せなくなります。
ストレスは溜まり続け(爆)第17場で爆発。
『ちょっと黙っててもらえませんか?』の一言で
ロバートも意固地になり、好ましくない青年像を
ジョンに懐いてしまいます。

そんな2人ですけれど、第23場のロバートが
独り空の客席に向かうジョンを、酔いながら見詰める幕後、
少しずつ共に俳優として気持ちが歩み寄りを始めます。
ロバートが台詞を忘れ、手首を切り、ジョンは彼の
苦しみを理解し始めるのです。
最終場では、お互いを労わる気持ちを取り戻し
ジョンは青年らしく若々しいラストを、ロバートは
老練な人生の先輩としての哀愁を帯びたラストを
飾って、このお芝居は静かに幕を閉じます。

戯曲自体に、パワフルな物語性や高揚感が無いのに
何故、このお話が心に響くのか。
其れは、全ての人々がジョンの様な活き活きとした
若人時代を送り、そしてロバートの様な負い目を感じる道を
辿ると云う人生の縮図が、舞台俳優を通して
垣間見ることが出来るから。
それを演じ私達に伝えることの出来る市村さんや
竜也さんの様な存在は、本当に貴重です。

私は自分の年齢的に、ロバートの気持ちは余り
慮ることが難しくそして、こう云う人居るよなぁと
思わせて頂きました。
賑やかで豪華なお芝居が好き、物静かで坦々としたお芝居は
好みでは無い、その好み以外にもきっと観客側の
年代によって、様々な印象を受けることが出来る
非常に珍しい舞台になっていると思います。

間の取り方とコメディー色を強めるか弱めるかによって、
色々な楽しみ方の出来るお話です。
市村さんは、力の抜き具合を心得ていらっしゃるので
面白おかしく軽々と演じていましたね。
竜也さんも、砕けた表現をよく勉強されていて
もっともっと、リラックス出来るよ♪と思いました。

本日のアクシデント。(^_^;)
第9場の弁護士の劇中劇。
ロバートの『私が子供の父親だと聞かされた訳だ』
が『私が子供の夫だと聞かされた訳だ』…
次の『そうだ…』と云うジョンがこちら側に向き
『ぃゃ…違う…』暫し沈黙。
市村さん、はっと気が付き言い直しました。
が!音響さんも釣られて動揺。
鳴るべき卓上の電話が鳴らない。
再び、暫し沈黙。(爆)
痺れを切らした市村さん、振り返り電話を指差し
指示を出し、即座に電話が鳴り事無きを得ました。
これ!!!劇中劇でロバートもジョンも客席側に向かって
行動しているのですからリアルです。
通常の公演中に同様のアクシデントが起きても、
恐らく舞台裏側では同じ光景が展開することでしょう。
或る意味、非常に美味しゅう御座いました。(^^ゞ

長くなり過ぎましたので(ーー;)ちゃむの
竜やん一押しシーンコーナー。(←何だそれ)
第7場の抑えてくれ発言に対する『何ですと?』度。
第17場の『若気の至り』度。
第19場の、自分の俳優人生の汚点と第24場の、

ロバートの俳優人生の汚点に対するうろたえ度。

お衣装は物凄くお金が掛かっていると思います。
赤Tシャツでなかったら、短髪にジーンズにジージャン…
アリダしか思い当たりませんでした。(/_;)
第11場は黒眼鏡ではないのですが、丸眼鏡を賭けて
いらっしゃるし『膝掛けですね。』の台詞が一瞬、
俊徳さんミックスで御座いました…
勝手に好き♪な衣装を主張致しますと、第4場の
縦ロールに成り損ないの、金髪ソバージュの鬘。
第9場のオールバックにダブルのスーツ、そして!
第18場のダニーの水兵スタイル♪
つなぎもメイクも帽子も可愛くて、とてもお似合いでした。

第23場ね、間延び感が否めないので竜っちゃん
一工夫求むぞお〜〜〜。(*^^)v


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