ライフ・イン・ザ・シアター・4/5マチネ

ハムレット観劇の時、運良く1〜3列目を延々
行ったり来たりして思った。
リピーターは、色々な角度や位置から楽しむべし!
それからは、後列や2階席でもすすんで観る様になりました。
本日14列目下手側にて観劇。
傾斜が大きいのでとても観易い。
だがしかし。眼鏡では人影しか見えない。(泣)
由って常にオペラグラス観劇。
今公演、動きが少なく狭い視野に御二人が殆ど
収まっていた為助かった…

このお芝居ね、一回のみ観劇するのも悪くない。
但し其の場合、多くのものを受けて余韻を楽しむ人と
何も受け取ることなく終わってしまう人、完全に
二手に分かれる。
そしてリピートする場合は、観る度に異なる感動と
温かい想いを胸に、帰路につける。
それがこのお芝居。
実際、5日前に観たものとは全く違う色を出しておりました。
是は、日々の進化とは少し違う様に感じます。
遊べる幅が大きいだけ、毎公演異質の世界観を
作り出せる舞台です。
本当にお芝居の好きな俳優さんならば、競ってでも
演じてみたいであろう戯曲と言えましょう。

全体的にですけれど、ロバートの疑問符の?を
市村さんはとても抑揚を大きく、ふわりと
詞を置くかの様に強調されていました。
第1場のジョンは、終始肩からの力が抜けず緊張して
前で手を組み、はっきりと相槌を打っています。
ロバートから胡桃の意味を聞いている時、とても
幸せそうな表情を見せておりました。
ロバートの首筋に残ったメイクを取る為に楽屋へ戻ると、
その瞬間だけほっと肩から力を抜いている様子が
見て取れます。

挿まれている劇中劇では、『演じている』楽屋風景とは
別の次元で、しっかりと『演じて』いることが解かります。

第5場の、ストレッチをしている幕。
ロバートが、ジョンの柔軟性に及ばなくなっている
演出に変更されておりました。
2人でレッスンバーに足を乗せ、きつい屈伸運動を
競い合ってみたり、身体能力では勝っているジョンが
ロバートの云わんとするところを理解出来ていない様が
大変好く表されていました。

第8場の、ロバートがジョンに芝居を抑えてくれと言う幕。
この時のジョンの『はぃい?』が絶妙。
最後の『お見事!』は、かなり嫌味を込めて発して
いらっしゃいますが、もっと皮肉っぽく言っても
差し支えないかもしれません。

第9場の『私が子供の夫だと〜』は、もう完全に演出に
取り入れられておりますね。
インターホンの鳴り遅れも然りです。
お客さんが驚いて、会場が沸く効果が絶大。

第11場に関しては、ジョンが人の話しを
聞き入れずに上の空の状況を、巧く揶揄していますね。
『窓』と『寒過ぎる』この2点で伝える力。

本日の第13場、爆笑の渦に包まれました。
大袈裟に、力んで本読みをするロバート。
意地になったジョンの最後の台詞。
   『そろそろ雨になりそうだ!』
歌舞伎調で、拍手喝采の暗転。
巧みな技巧とは、この様な一瞬で観客を攫ってしまう技量を
指すのかもしれません。

第14場の、食事をしながらオーディションの話を
進めるシーン。
パンがっ!
初見の時には、物凄い勢いで大きく切って食べていたのに
最初にちょっと何かに浸して食べた後、細々と千切って
小さく丸めて食べていた♪
それでも、喉に詰まって台詞がきつかった。
お文姐さんみたいに^m^バナナにしてもらいなさい。(笑)

第19場。天体暦⇒諸行無常でしたね。
色即是空なんかでも素敵かも。
出のきっかけを外したジョン、
       『出なきゃ…』
悔しさの余り、本当に泣いていたからびっくりです。
そんなに悔しいのか、ジョンよ!!!

第22場の、ちょいと高ピィ〜になっているジョンは
自分のタオルをロバートに使われ
        ブチッ…
『さん』付けが無くなって『ロバート』と呼び捨てる。
そして『取って来ればいいでしょう!』を冷たく
『取って来なょ。(怒)』と言い放った。
怒りが伝わって参りましたよ。

第23場、私悪いけど(←誰にだ?・笑)泣きました。
伝わって来るものが全然別物。
ジョンはね、この幕で酔ったロバートの話に
一切相槌を打ちません。
ただただ聞いて、見詰めているだけ。
でも、ちゃんとロバートの詞がジョンの中に
入って行っているのが解かりました。
自然に涙が溢れましたよ、凄い波動ですよね。

第24場の術中の劇中劇は、兎に角解かり易く
大きく演じています。
どちらも決して譲らない意固地さが、とてもコミカルに
表現されております。

目に映っているもの、耳から入って来る声や音。
存在しているものだけを拾っていては、このお芝居は
楽しめません。
本を読む、其の行為ととても酷似しています。
白い紙の上に、黒いインクで文字が並んでいる。
それを目で追うだけでは世界は拡がりません。
読み取って、自分の中で創造する。
是がライフ・イン・ザ・シアターの楽しみ方だと
私は思います。


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