人は常に出口を求める〜別天地へ〜 HAMLET[U] 2003/12/17


今私は藤原竜也その人の、精神力の本質を垣間見られた幸せに浸っています。
騒がしい客席が誰言うこと無く静寂に包まれ、これから訪れる何某かをじっと待ち伏せている。
この不思議な空間は、日常の生活の中では体験し得ぬもの。

初日の彼は手探りの不安の中にも、満ち溢れる自信の根を舞台にしっかりとおろしていました。
活字の上では決して面白可笑しくないものを、台詞に乗せて人々の笑いを誘える様に成ったことは、
竜也さんの努力と忍耐と信念の賜物であったと思います。
天命への試練を、また一つ乗り越えたなと感じました。
この4年半の間「あっ・・・彼の肉体を借りた何者かが演じている・・・・・」と感じてしまった時、
そんな自分の弱さを「憑いてたって別にいいじゃない。支障無し。構わないわ。。」と赦してしまっていました。
しかし21歳の魂を注いだハムレットは、そう、紛れも無く彼自身だった。
観てくれ、聴いてくれ、感じてくれ。 これが俺なんだ!
そう主張しているかの様に。。

あの激しい動きに、巨大なフェンスのセットと剣の悪戯無く、大きな事故やケガが起こらず
終演を迎えられたことは、舞台の神様が見守って下さっているお蔭です。
演出や細かな立ち位置の変更、アクシデントやアドリブも少なくないお芝居となりましたが、
威風堂々演じられた源となったことでしょう。
__天は自ら助くる者を助く__


公演前、しきりに『入り口が違う』と連呼していた彼。
『丁寧に入りたい』そう願った竜也さんの開けた扉。

『えぇい、もう沢山だっ!お蔭で気が狂った!』
そう絶叫した瞬間、一ヶ月の時をかけて着実に歩みを進めて来たその先に、
ゆっくりと別の扉が開いた、そう感じました。
勿論その先にも、今迄足を踏み入れたことの無い道が繋がっています。
もう二度と、私が彼に憑依を感ずることは無いでしょう。

『あとは・・沈黙・・・』
そう発した彼に「。。ありがとう。。」と自然に心の中で呟いた自分が、今は愛しいとさえ思います。
その直後に、乱れ舞う白銀蒼の吹雪の喝采の中、
達成・官能・安堵・激励・感謝・情熱・興奮・戸惑い・喪失・混乱・怯え・・・
様々な想いが駆け巡った。
千秋楽のカーテンコールに初めて現れた彼の真っ赤な眼は、必死に崩壊することを耐え畏れ、
そして彼自身を支えていました。 その強さが、心底嬉しかった。。
夢を見ている様な情景。
全ての共演者と抱擁を交わしながら、大きくこちらに手をふりながら、最後に現れた彼が
手を叩いているのを直視することが出来た時空。
この人の拍手は!嗚呼・・・もう何も心配しなくていいんだよ・・・と、そっと伝えてくれた何よりの贈り物でした。

生まれて来て善かった、生きて来て善かった。
本当に、幸せなことですね。
この先も【俳優 藤原竜也さん】に、一生時めかせてもらえそうです。