近代能楽集・12日マチネ 2005/6/1


この度初めて前列で観劇。
さい芸は5列目辺りが一番観易いよな、と再確認。(^_^;)
でも前だと見えなかったものが色々
見えるわあ〜〜〜。
一番感激したのは小町のマニキュア。
壤さんの爪って凄くちっちゃい!それを潤し黒く染めている小町。
勿論99歳の時は窄めていて見えないけれど、お洒落さん♪
レースのドレスも実は華麗。
腰を折っている時は臭ってきそうに煮しめた襤褸に見えるから不思議。
もう完全に小町の虜となりつつあります。愛しくて堪りません。
将校達が口々に褒めそやしていますが
本当に、あんなにも美しい詞を綴る女性を現代で探すのは困難です。
セレブなんて歯が立たぬ程に。
日本語の素晴らしさ、詞の美しさを粛々と私達に伝えてくれる。
好きだなぁ、戯曲としての卒塔婆小町。
洋さんも後半物凄かったです。
俗悪さに身を委ねなかった詩人を渾身の好演で支えていました。

弱法師の今公演で、俊徳に三島氏の憑依は全く感じません。
それは竜也さんの舞台に対する意識や取り組み方、技量が明らかに
発展している印です。
今回は竜也さんが俊徳を演じていると、しっかり感じることが出来る、それが
最大の魅力ではないかと思います。
囁きから絶叫まで様々な声色を使い分けていますが、絶叫しても
無理に発声している様子はありません。
すこぉーんと頭を鈍器で殴られた様な重い衝撃がはしります。
真っ白なスーツに真っ赤な炎が映り込み映え映えとした猛火が揺らめきます。
桜間にこの世の終わりを見たねと同意を求める場面で、胎児のポーズが
くっきりとしてきました。
今迄何だか中途半端だったのですが幼児化のこの形容が私は大好きです。
最後のスポットライトも強く鋭く俊徳を照らし出す様になり、彼の
救われぬ空虚な世界が垣間見える様になりました。

日々細かな演出指導が加わっているのがとてもよく判ります。
私が慣れてしまったからでしょうか、未だ雷に打たれる電撃を享けていません。
ただ、蜷川氏が最も発信したかった猥雑さや淫靡さは充分感じ取れます。
尤も素の竜也さんに股間を扱いたり握り締められたら、逃げ出して
しまいますがね。(爆)
もっともっと竜也さんなら震撼させて下さると思い、じりじりと待っている
最中です。
夏木さんも硬さがとれて、自然な微笑みと無表情が表せる様になりました。
この級子の落差も重要だと感じています。
小町の台詞を借りるなら
『前へ!前へお進みになるだけですわ!』