近代能楽集・15日マチネ 2005/6/15


いきなり卒塔婆小町の演出が大きく変わっていて驚きました。
小町が通路を使って板上へ移動〜
時化モクを数える迄、大音響の鼓と拍子木が時を刻みました。
能楽音を意識して何らかの意図があり加えたのだと思われます。
登場にインパクトを持たせたとも考えられますが、弱法師の俊徳登場と
被り多少食傷気味でした。
小町の乗り出す立ち位置や台詞を向ける方向も微妙に変更されており、
蜷川氏の指示が激しく飛んでいることが伺えます。
壤さんの小町はより伸びやかに、洋さんの
詩人はより華々しく散るといった趣向も見て取れます。
詩人登場からベンチに座ることを勧められるまで、ふらふらと
酔いどれ加減を表し始めました。
やはり『酔ってるからさ。』の台詞前途体現することを選び始めたのかもしれません。
今回は小町の余りの熱情に、思わず涙してしまいました。
完成形と云うものは底深く、いくらでも発展することが可能だと言う証を観た
気が致します。

俊徳も、嘲り高飛車な二十歳から火がぐるぐると回り高揚し、やがて
猛火に眼を焼かれた五歳の幼児に戻る迄とても滑らかに生き生きと
演じる様になったと思います。無理することなく超自然体。
ほぼこのままの形を維持しながら弱法師は進んでゆくのではないかしら。
『ほぉ〜らぁ〜、まるで資格が
       ありはしないぃ〜。』
ちょっと甘過ぎかな?とも感じますが、これはこれで、蕩けそうな俊徳の毒が
突出していていいのかな、とも。

初めて弱法師スタオベで贈れました。客電が点灯しても拍手が
鳴り止まなかったので、夏木さんとげらげらと笑って喜んでいらっしゃいました。
素敵な俊徳さんを魅せて下さいましたね。