マチネを観て 2003/4/12

直前に戯曲を読破出来たことは、私には幸運だったように思う。
台詞が頭に既に入っていると言うことは、その舞台を初めて観る者にとって
期待が留まる事を知らない。
自分の中で彼らが生き、想像が膨らみ切っている。

お芝居が始まって直ぐ、ワダさんの衣装がこの舞台で、とても貴重な演出として
映えていると心の中で唸った。それぞれの時代。絶妙な色彩。
着て演じる者と、それを観る者の気持ちをひとつにする、素晴らしいものだと思った。

せり上がりから登場した人物が、松ちゃんとは一瞬気付かなかった。
1メートルも離れていないのに、誰だか判らなかった。
それ程彼女は華奢だった。
声質が・・・私にはちっと苦手な・・・ごめんなさい。
でも、動きはシャープ。身体の切れがいい。

マダム。何と突き抜ける様な声なんだろう!
安心感を抱かせる見事なかつぜつ。
彼女は更に小柄。
神の衣装は嵩が大き目で目立たないが、軍曹姿はちっちゃい。(笑)

野田氏も、勿論小さい。(爆)
役者の彼を一言で喩えるなら。猫♪
すばしっこくて、お茶目。
アドリブも其処此処に・・・

富士の母ノンキダネ。はいりさん最高。(笑)
一目ではいりさんと判る。(←冗談ではありまっせん)
舞台上の彼女は、堂々としていて貫禄たっぷり。

好き⇔嫌いがはっきり分かれる方ではあるけれど、役者としても
作家・演出家としても、やはり野田さんは秀でた才能・人を魅了し轢き付け放さない、
独特の力が漲っていると思った。
台詞に鏤められた洒落っ気たっぷりの遊び。
演者が楽しみながら生き生きと演じられる、その要因になっている。

美術・舞台装置・小道具。
どれをとっても文句の付け所が無い程のアイデアと創意工夫が満ちていて、
観客を飽きさせず満足させていると私は思った。
今回のお席は、さつまいもや電話帳が跳んで来たりして楽しかったけど(笑)、
舞台装置が壮大なので少し後ろで観たい、と贅沢なことを思ってしまった。
役者さん達の動きも目まぐるしく速いので、目で追うのは付いて行くのが難しかった。
このお芝居は絶対、後方からがイイ!

あ・・・竜やんのこと、後回しだ。(爆)
初めの台詞が唯一今回、長台詞の部類です。
特攻服、似合ってたなぁ〜。
零戦も{おおー。}と感嘆の一品。
何だか、お声が良く言えばハスキーボイス。
つまりは少し、嗄れ気味。大丈夫か?
先は未だ長い。うぅー。
これ以上出なくならない様労わって欲しい。
でも、それも中々公演上難しいかな・・・
ビンタ!もっと思いっきりだと期待大だったのに。(←うぁっ)
吹っ飛ぶぐらいじゃないと。(←ひょえぇ〜〜〜)
生身だから。(^_^;
怒涛の掛け合い。面白いこと言ってんの。
確かに笑える。でも、惜しい。
御本人、楽しそうな顔ってゆーより、いっぱいいっぱいの御顔してた。
余裕が出てきたら変わって来るかな。がんば!

橋本じゅんさん。流石新感線で慣れてる。
彼の役柄はちょこまかしてるけど、余裕を感じられた。

光っていたのは小手伸也さん♪
インナーチャイルドのお芝居は拝見したこと無かったのですが、いい声してる。
低い太い声。あ、ちこっと体型も太い。(笑)
軍服とレイバンもどきのサングラスが似合い過ぎ!
マ○ド○ル○のハンバーガーを食らうアメリカ兵。
マジで食べてた!あっと言う間に。もぐもぐ。
大柄な方なだけに、可愛かった♪

戯曲を読んだ時、神話の言葉合わせの電話帳を、一体どうやって
使うんだろうって興味深々だった。
後方からなら、神の力で現れてゆく様が感動出来ていたんだと思う。
私には、黒子の如き二人が(笑)見えてしまって、ちょっと萎え。

汗。野田さんも凄かったけど。
何が大変そうだったかって。
それは、藤原竜也の噴出し滴り落ちる汗。
こっちの方が私にはオイルに見えた。(笑)
あのスカジャン着て、舞台中走り回れば暑いよね。
眼に入る汗を、お芝居に支障が無い様に拭う彼。
何度拭いてやりたいと思ったことか。(#^_^#)

石油は化石が燃える。それが老いるに繋がってる。
んん〜〜〜、素晴らしい!
あの野田氏の頭の中を見てみたい。(笑)

そうそう、沙弥加ちゃん。
彼女も小柄だけど、甘ぁ〜い声色が上手い!
ご本人はパンフで、地声が低いと嘆いているけれど。
彼女の野田さんへのスーパーキックは逸品だったぜぃっ♪
ヤマトと醍子の
   男女の音。。
これすっごく気になってたんだよねえー、ってか、予想外に濃厚だった。
困った。(爆)
照明ピンクだし。あぅあぅあぅ〜〜〜♪
でもね、この二人がいい仲になることの意味って、私解からなくて。
どなたか解かった方、どうぞ教えて下さいまし。
ここだけ解せんー。(悶)
い、いいんだけどね♪

古代と戦後の時空間の演出。
色々なパターンで魅せてくれます。
あたしきっと、ぽかーんと、口開いてたよな。(笑)

序盤でマッサーカー軍曹が海を眺めながら呟く詞。
  『復讐心に注がれるオイルだわ。』
この詞が私は気に入っています。
この幕の照明と音響の効果はいいっす。
ほんとに海で黄昏です。。

一斉掃射の幕は、見応えがあります。
延々長いですしね、役者さん方のスタミナが試されるとこです。

ヤマトの最後の台詞。痛い。辛いです。
私《太田川》と《産業奨励館》は、心が抉られる。
後に原爆ドームと呼ばれるようになりますが、当時はとてもりっぱな西洋館
だったのですよ。

轟音と共にヤマトの乗った零戦が、砂の中に埋もれていく。

ここはもう、観客一人一人の中で。
最後の松ちゃんの長台詞。
心に響きます。最後にびっくり驚いたのですが。
詞を綴りながら{あら?あらららら???}
と思っているうちに、松ちゃんの瞳から、正にオイルが湧き出る如く、砂漠の
オアシスから清水が湧く如く、涙が急にぶわあーっと溢れ出て来るんです。
その涙が頬を伝い、舞台上に落ちてぼたぼたと音を立てるんです。
役者さんって、本当に凄い。
私には絶対出来ません。

ヤマトが何者なのか。何処から来たのか。
それは皆様の心の中に・・・

ひとつだけ。音響、もう少し大きくてもいいかな、と。
もっと騒がしかったり賑やかだったり、荘厳で、派手で良いと思います。