「千の目対談」レポ  by ame


■彩の国さいたま芸術劇場アーツ・コミュニケーション・シリーズ
 「第12回 NINAGAWA千の目」

■日時:1月6日(日) 13時〜(約1時間)

■場所:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール



「千の目」のご報告です。
内容については既にご存じかと思いますが、
振り返って私なりにお伝えさせていただきます。
開演のブザーが鳴り一時になると同時に、舞台左手より蜷川さんに続いて竜也君登場。
いつもはゲストを呼び込む形でスタートするのだけれど、 「皆さん彼に会いたくて来ているのだから…」とお二人揃っての入場でした。
出で立ちは、髪は短髪のオールバック、髭はうっすら、黒VネックのロングTシャツ、 濃紺のGパンに先の尖ったハーフブーツ(私の位置からは色は黒、セーターにも見え髭も 見えませんでしたが) そしてかなりお痩せになっていました。

蜷川さんはいつものように全身黒で、私にはトレーニングウェアに見えたズボンは、革のズボンだったようです。

第一声は蜷川さんの「いくぞ〜・久し振りあけましておめでとう…」

皆さんからはいつも一緒にいるかのように思われているけれど、お二人はめったに話し込む事がなく、 ロンドン(プリマスの歩道に腰掛けて話したそうで、タイタスの時でしょうか、プリマスにも行かれたのですね) 以来だとおっしゃっていました。

(蜷)一緒に行こうよ!と誘っても避けるところがある…なんで?
   藤原君は生まれて始めて見たのが僕だから皆が可哀相だって同情するんだよ!

(竜)芝居の前とかに会うとなんかダメになりそうな気がする。

(蜷)藤原君に関しては1回出来た事が出来ないと不愉快になるんだよ、腐った魚じゃないんだから…
   で藤原君は公園で木とか蹴ったりしてるらしいー

(竜)蜷川さんは完璧しか見たがらない人、少しでも許してくれないから死に物狂いでついて行きます。

(蜷)チョッと立ってみて、痩せた?

(竜)先日撮影の終わった映画で阪本監督がOKを出されてもそれが、本当のOKなのか、
   「藤原はこの程度だこれ以上要求してもダメだから」のOKなんだろうか…とか不安になって、
   酒や食事を制限して不安を和らげるーで微妙なバランスがとれて僕としては良かったねので、
   身毒もあるし続けてみようかな!と。蜷川さんの場合どうですか?

(蜷)阪本監督は神経質な人だと聞いているけれど…
   僕の場合もこれ以上やっても無理だと判断してあきらめてOKを出す事はあるよ。

(竜)そうなんですか〜
   竜也と呼んで下さい(以降竜也に)

(蜷)さっきは痩せたのは身毒の為って嘘言ってたんだよ!

(竜)それもありつつー

(蜷)もう樽に入らないんじぁない?
  (桶じぁ無く樽と言ってましたね、樽なしでいこうとか、大きな樽用意して下さいとか)

(蜷)ルール違反だけれど、バービカンでの映像を残してくれた人がいて、それをチョッと見てもらいます。
   竜也、バスから劇場の前に下り立った時「ワァ〜ロンドンだ、ロンドンだー」って言ってたよな!

(竜)だって始めての海外でこの為にパスポートとりましたし…

(この後、千秋楽のカテコの映像を見ました。蜷川さんと竜也君は舞台に直に座ってスクリーンを 見上げていました)

(蜷)竜也はバービカンが初舞台だった、のびやかで、単純で可愛いかった。

(カーテンコールの映像)

白石さん登場で、蜷川さん「怖いねぇ〜」

竜也君の腰の調子が悪くてお辞儀も出来ない状況であった事を逐次解説していました。
最後竜也に呼ばれて蜷川さん登場!

(蜷)これ見て欲しかった、拍手が多いでしょ!ロンドンでは僕の方が人気がある!
   竜也がストイックに仕事をするところを見て欲しかった。

(竜)最初の出会いが「身毒」「蜷川さん」「白石さん」 これがなければ今の僕は無いと思っているし、
   間違った方向に進んでいると思う。今ここに立ってない、大きな出会いであった。
   年明けてから台本(身毒ですね)を読み始めている。

(蜷)昨日ビデオをみたんだけど、複雑な演出してるなぁ〜

(竜)池袋でオーディションで出会って、今でも話してると汗(冷汗?)をかきます。
   イギリス行きたいです!!

海外でやる意味について

(蜷)イギリスは緊張する。でも(演劇の)土台がある分、日本より理解してくれる。
   アメリカ、ニューヨークのお客さんはダメだと思ったら帰っちゃう。
   義理(の概念?)がないから、劇評も同じ…本当の事を書いてくれる。
   評価されたいわけじぁなく、そういう場所にさらけ出してみる、自分の為にね。

ワシントン公演について

(蜷)今回のはプログラムがとてもいい。
   日本の文化を良く研究している、古典についても偏っていない。
   だから作品(身毒)が優れている事を立証してほしい。

(竜)頑張ります!
   ロンドンでバブとかで向こうの俳優とかに、日本で何をしてた?…って聞かれて
   蜷川さんとハムレットやロミオをやってた…って答えると、皆知ってる。
   知名度(蜷川さんの)が高いと感じました。

(蜷)オセローの取材でベニスに行ったらやたらいろんな人に「竜也をみた」とか、
   「パブで飲んでましたよ」とか聞いた。
   あまり飲み過ぎないように…でどこにいても見られてるって大変だな!

(竜)気をつけます。最近大きく変わったんです。
   今までは、薬のカプセルのように自分を守っている、思いを縮めている自分がいたんです。
   年明け前ごろからそれが割れた。 何を守っていたのか…
   人にどう思われても自分の気持ちで仕事をして行こう!と。
   小さかった自分…でもそう思うようになって、すごく楽になった。
   俳優は(創る)作品を選べない、出るか出ないかを決める事の難しさってありますよね!
   決める時はまぁ皆で(回りの人達)決めるわけですが、出たら全部自分の責任になる。
   人(世間)は忘れても自分の中では一年も二年もずっと残るわけで。

(蜷)義理でやった仕事は不愉快でそれは消えない。
   自分も消したい過去があり、記録から消してる作品がある(4つと言ってたかと)
   義理でやるとダメだ。

(竜)ダメっていったんですか?

(蜷)相手は良いとおもってんだから…でもに経歴には書かない!

(竜也君うなずく!?仮面学園か赤い疑惑か…ムンジェリか?)

(蜷)俳優は仕事を選べない…って言うけど、演出家も同じでなかなかえらべないよ。
   その中で流されない、やりたくないものは、やらない!
   なぜあそこで!ってのあるけど、でもまだ若いんだから、
   悪いものも食べて失敗して、得るものもある。
   竜也が二時間ドラマとかで軽井沢で彷徨い歩いてて
   「何やってんだ〜」とか(かまいたちでしょうか?)

後、蜷川さんと映画で組みたい。

(蜷)映画はまだ三流なので、後1、2本撮ってから

(「蛇」にゲストで出演した時の話)

(竜)深夜の撮影で楽しかったんですけど「新人監督の蜷川です」って言われてびっくり!
   どうしていいんだか〜

(蜷)今回は友情ででてくれた。映画の現場の竜也は全然違う。良い子ぶってない。
   演技がのびのびしている。ツバ吐くし、ズボンに手突込んで、まるで田舎のヤンキー
   僕はだまされていたのか?
   近い将来違う(舞台とは)竜也をみせる事ができるかもしれない。

(竜也君の新しい面(魅力)に気付かれたようです)

(竜)後、蜷川さんとは新作で勝負したいと思ってるんですね!

(蜷)わかった! で、どんなの?

(竜)シェークスピアやギリシャ悲劇も良いんだけど、蜷川さんの気持ちが生きている、
   思いを表すような、社会的なもの(この辺ちゃんと話が読めなくて、ちょっとあやふやです)

(蜷)70年台のような、唐や清水がやってた時代を生きている感じ?
   じぁ「白糸」は好き?

(竜)今でもやれるぐらいです。

(ここで「白糸」を観た人に挙手を求め、人数が少ないのを見て)

(蜷)少しは使えるかな!

(竜)映画と新作、大勢の人の前で約束しました!

(蜷)まだ使ってない分(作品と言う意味か、竜也君の可能性なのか)があるから…
   実は清水の作品が決まってるんだけど…キャスト組み替えしたくなった。

(竜)初舞台の練習は豊洲であり、毎日通って、怒られて泣いて吉野家の牛丼食べて、
   なんで?と思いながらその繰り返しで、雛の親として、
   (蜷川さんが)元気な内に責任とってください!

(元気な内に(失言)に、会場から笑が…そう言う意味じぁなく…と弁解しつつも
「元気な内」を連発しました。深作監督のトラウマでしょうか?)

その後「ハムレット」の映像を観ました。

(母の結婚を哀しむ独白からホレイシオとの再会の場面)
開口一番

(竜)芝居って良いですね!
   一生やってゆくだろうなぁー。

(蜷)良いねぇ〜
   良くやってたね!毎日怒られて、大変だった?
   フェンスをどうバンバ〜ンって、カッコイイねぇ〜。
   何で、賞取らなかったんだろ?でハムレット観た人?

とまた会場に問い掛け。
けっこう多かった。

チョッと説明しますね。
コクーンの真ん中に金網で舞台を作って両方から観る、で後半は金網を取る…
っていうやり方でした。

(竜)どうでしたか?

(蜷)大変だったけど、でも稽古初日の竜也が良かったからね!いけると思った。

(竜)結果論ですけどハムレットを経験してからロミオ…という順番は間違ってなかった。

(蜷)21歳の若いハムレットは世界でも今までやった事がなくて…
   今はイギリスで若いハムレット、自閉症のハムレット、竜也も観た?

(竜)観ました。

(蜷)若い人がやってるけどね。
   若くても(竜也君の事)ちゃんとしていた。

(竜)良かったですか? もう一回やりましょう!(拍手〜)

(蜷)これビデオになってないんだよね。僕が○イル○・○イビ○の音楽使ったから…と凹んでました。
   ハムレットの時の髪形と今日の髪形、どっちがいいですか?(客席に対して)
   さっき「リア王」の稽古場に来たんだけど、皆に髪形の事笑われてたよね?

(竜)外見は関係ないです。新しい事(舞台以外?)をやって行く事で演劇にも影響すると思うんです。

(蜷)小さい事(外見)も気にして、それ以外は伸び伸びと積極的に…。

(竜)作品考えてください。今までは蜷川さをが竜也には今これ…って考えてくれて、
   そのハードルを超えるだけだったけど、ここ最近…
   一、二年前から、自分からアクション起こすようになりました。
   自分からアプローチしなきゃ。
   オギャーと産まれて見たのは、蜷川さんの顔でした。責任取ってください。

(蜷)仕事の出来る内に(笑)…だな!?
   仕事が無くなっていくのは、演技よりも人間性、最初は良いけど続けてはやってらんない。
   ○井○○りなんて仕事減ってるだろ!
(竜)(苦笑)

(蜷)仕事が無くなっていくのは早いよ!経験してるからね。
   僕は自分で劇場のドアを叩いて仕事をとって来た。
   セゾン劇場でやれる事になって「夏の夜の夢」を白石加代子さんが引受てくれて、
   石庭で繰り広げられるお話なんだけど…
   あそこ(セゾン)は傾斜がないから前の人の頭がひっかかるんだよ。
   だから劇場を××(説明してたけど良く分からなかった)と改造して、
   外国の演出家(名前聞き取れず)と僕ともう一人の三人で順番に上演する事になってたんだけど…
   外国の演出家が来ない事になって、全部ふっとんで…
   でどうしようって事になり、ベニサンでやったんだよ。
   劇場も無いし、お金も無いしー
   かつらなんて、当時から東京のゴミ袋は白だったけど、埼玉はまだ黒いのがあったから
   それでワカメみたいなかつら作って、花も買う金ないから、花作りで有名な…
   名前忘れたなあ!その人の所に行って、いらなくなった花ください!って。
   名前思い出した!○○さん(私は忘れました)だ!良く行ったよね。

(竜)で、貰えたんですか?

(蜷)もらえたよ。いっぱいね、いらなくなった花、あっ造花だよ。
   でベニサンでやったわけ…。
   小さい劇場だから、○○人(人数忘れました)ぐらいしかお客さんが入らないんだけどね。
   そこからスタートしたわけです。
   仕事があることの大切さ、危機感を持つ事の大切さ。
   自分でアピールしなくちゃ。言いたい事は言って、言い過ぎたら謝る!
   僕なんて母親(まだ元気って言ってたような?)に
   「幸雄お前は口に気をつけなさい」っていわれるんだよ。
   竜也もなんかそうゆうの何かある?

(竜)そうですね、僕はなんか真剣に話しているのに、軽くとられる…
   この前NHKで海老蔵さんのやってて、アナウンサーの人が笑ったんです。
   そうゆうの許せない…真剣にやってるのに!

(蜷)そんな思いをたくさんしながら、自分で自分をジャッジする
   その為には自分を成長させなければ…
   お正月にイチローのやってたね!見た?
(竜)はい見ました。

(蜷)天才はすごいねぇ!!
   お客さんに自分は見られてナンボの仕事だから、自分がリスクを負うのは
   当たり前だってよ!野球に呪われてるな。
   それから村上春樹さんの「走ることについて語るときに僕の語ること」って本は良いよ。
   竜也も読むと良いよ。「走ることの…」って長いんだよ。
   もう歳だから覚えられないけど、本屋に平積みされてるから…。
   優れた人の行き方を見たり読んだりして、自分はマダマダと感じて。
   今なお学び自分を信じて進み続けるヤツはカッコ良いよね。
   僕は自分の診断は引き算をする。まだまだダメだって。
   自分でジャッジする目を持つには学ぶ事。

(竜)でも自信(根底に)は…ある!?

(蜷)ぅん(照れて、控え目に)

(竜)蜷川さんは楽をしませんよね!

(蜷)うん、竜也は?

(竜)僕もしない!蜷川さんを見てるから…
   楽に対する憧れはあるけれど、自分がダメになると思うから…。

(蜷)竜也から、「アレ(あの演技?)って許せますか?」って電話してきたことあったな。
   俳優の名前は言わないよ!僕も大人だから…

(竜)(苦笑)

(蜷)すぐにムキになる!僕と同じだ(笑)
   で、そろそろ時間!

【客席】えぇ〜

(蜷)えぇ〜って言ってもダメ!リア王の稽古があるから…
   リア王の稽古に帰ります。
   竜也とこうして話していると、気持ちが高ぶる…とブレる。
   だから15分位休まなきゃダメだから、僕は(竜也は?)帰ります。
   今年は身毒丸をアメリカの人や関係者に見てもらって、日本に持って帰る。

(竜)今ある自分を否定して、新しい自分を観てもらえたら…。

(蜷)他の人と仕事してもいいけれど、良い仕事してね!!!

拍手のなか僕(蜷川さん)だけでなく、竜也くんも一緒に、蜷川さんはスタスタと、
竜也君は客席に会釈しつつ、左手に消えて行かれました。


おしまい。


読み返してみると、読み難くて申し訳ありません。
内容も聞き違いや勘違い、また捏造(もちろん悪意はありませんが)されてしまった部分も
あるやもしれません。その点ご了解ください。
少しでもその場の雰囲気を感じていただけたらうれしいです。